めがね舎ストライクのオリジナルめがね

自分だけのめがねを作る文化を広めたい めがね舎ストライク(後編)

2019年01月24日 3Dものづくり

お客様と対話しながらビスポークで理想のめがねを仕立てる神戸の眼鏡店「めがね舎(めがねや)ストライク」。めがねの製造に当社の3次元切削加工機をお使いいただいています。前編に続き、後編では代表の比嘉大輔さんに、めがねがどのように作られているか、今後の展開などについて伺いました。

めがね舎ストライク代表の比嘉大輔さん

めがね舎ストライク代表の比嘉大輔さん

工房でめがねができるまで

当社の3次元切削加工機をはじめ、めがねを作るために必要な工作機械が揃った店内の工房を案内していただきました。めがね業界では削り、磨き、組み立てなど工程ごとの分業が当たり前ですが、めがね舎ストライクでは1人の職人がすべての工程を担当します。

店内の工房でめがねを作る、職人の川谷萌さん

店内の工房でめがねを作る、職人の川谷萌さん

めがねを作るために必要な機械が揃った工房

めがねを作るために必要な機械が揃った工房

ストライクのめがねはどんな素材でできていますか?
アセテートという樹脂素材を使っています。切削加工で作るめがね素材の中でもポピュラーで扱いやすい素材です。色も豊富で、人気の黒やべっ甲色のほかにマーブルや透明のものなど30~40種類はあると思います。どの色を選ぶかはお客様の好みもあるので難しいところですが、相談しながら決めていきます。

めがねができるまでのプロセスを教えてください。
CADで作ったデザインを元に、御社の3次元切削加工機を使って板状の樹脂素材を削り出します。フラットな状態でできあがるので、そこから曲げたり、レンズをはめる溝を彫ったり、蝶番などのパーツを組み込んで噛み合わせを作ったりしてめがねが完成します。

当社の3次元切削加工機MDX-40Aでアセテートの板を切削

当社の3次元切削加工機MDX-40Aでアセテートの板を切削

削り出した後のフラットな状態のフレーム

削り出した後のフラットな状態のフレーム

削り出したフレームを温め、専用の金型に押し当てて立体に。一つひとつ異なるデザインのため金型に当てる位置も微調整しているという

削り出したフレームを温め、専用の金型に押し当てて立体に。一つひとつ異なるデザインのため金型に当てる位置も微調整しているという

3次元切削加工機を導入するメリットは何ですか?
切削加工はめがねの一大産地の福井・鯖江でも一般的で、量産用の大型の機械を使って決まった形のフレームを一度に削ります。大型の機械は金型や治具が必要なので、うちのような規模では導入が難しい。そこで一本ずつめがねを削れるマシンを探して見つけたのが御社のMDX-40Aです。実際に導入してみて、サイズもコンパクトでバランスの良いマシンだと感じました。うちのように量産ではない場合、御社の機械以外は考えられません。

工房に設置された3次元切削加工機MDX-40A

工房に設置された3次元切削加工機MDX-40A

めがねの製作事例を教えてください。
お客様からオーダーをいただくのはスタンダードな形のものが多いですね。ユニークな事例では、DJをされている方からのオーダーで音符をモチーフにしためがねを作りました。

 表が黒、裏が透明の2層になっている素材を削り出して作った音符モチーフのめがね

表が黒、裏が透明の2層になっている素材を削り出して作った音符モチーフのめがね

また、僕の知人から自分の結婚式で使えるめがねが欲しいとオーダーを受けて作ったこともあります。新郎新婦がかけるので、式で横に並んだ時に対称な形にしています。誓いのキスの時に重なるように(笑)

結婚式用のめがね。他のめがねと同じ樹脂素材で作り、特別に金箔と銀箔を貼って仕上げている

結婚式用のめがね。他のめがねと同じ樹脂素材で作り、特別に金箔と銀箔を貼って仕上げている

めがね舎ストライクの目指すところ

めがね舎ストライクを始めようと思ったきっかけは何ですか?
きっかけはオリジナルのめがねを作りたいと思ったことです。10年以上めがねのセレクトショップで販売やバイヤー、企画の仕事をしていましたが、他の店にも同じような商品があり、商品では店の独自性を出せないと感じていました。オリジナル商品をやりたいと思い、鯖江の工場を訪ねてたくさんの職人の方に聞き歩きました。そこで直面したのが生産ロットの問題です。通常のめがねの製造には金型が必要で、一型で最低でも100本ほど作らなければいけません。それではお客様に合わせてデザインを変えて作ることなんてできるわけがないと。それなら、機械を揃えて自分たちで一から作った方が将来的な独自性があると感じ、めがね作りを始めることにしました。

そこで僕が代表を務める会社(めがねの小売店などを運営するHIGAMEGANE株式会社)のスタッフの中から職人になりたい者を募ったところ、当時販売員をやっていたスタッフ(川谷さん)が手を挙げてくれました。鯖江でめがね作りを一から学び、2016年にめがね舎ストライクをオープンしました。現在、僕が営業と設計を、2名の職人が製造を担当しています。

オープンしてから感じたことを教えてください。
オープン以降、メディアで紹介していただいたこともあり、ビスポークのめがねを作りに来られるお客様が徐々に増えてきました。最初は軽い気持ちで始めましたが、やればやるほどこれはめがねの本質だなと。お客様の顔のサイズに合うめがねは今までもありましたが、そこに積極的に取り組んでいる眼鏡店はほとんどありません。

お客様がめがねを買おうと思った時に、現状では既製品から選ぶという選択肢しかほぼありません。もちろん既製品がいけないとは全く思っていませんが、オーダーして作るという選択肢もあってしかるべきだと思います。ビスポークをめがね文化の中に広げ、根付かせることは僕の使命だと思っています。

今後挑戦してみたいことはありますか?
今よりもっと大きな規模で職人を揃えて、日本全国の他の眼鏡店さんにもオリジナルのめがねを提供できるようにしたり、うちのような店をパッケージとして他の眼鏡店に展開することなどに取り組み、業界を動かしていきたいと思っています。また、既製品のセレクトやヴィンテージ、ビスポークなど、お客様がさまざまな選択肢から自分の理想のめがねを選べるような店舗もいずれ展開していきたいと思っています。

ありがとうございました。

めがね作りの奥深い世界、そしてビスポークのめがねを広めたいという熱い想いを感じられるインタビューでした。

めがね舎ストライクの詳細はこちら