乗ってみたくなる電動車椅子「WHILL」

乗ってみたくなる電動車椅子「WHILL」 試作内製化で開発をスピードアップ

2020年05月13日 3Dものづくり

「100m先のコンビニに行くのをあきらめる」――そんな一人の車椅子ユーザーの声から開発が始まったWHILLは、車椅子の概念を超えるパーソナルモビリティです。開発現場での試作品作りに当社の3次元切削加工機「MODELA MDX-50」が活躍しています。

開発を行ったWHILL株式会社(神奈川県横浜市)にお話を伺いました。(以下、WHILL株式会社 車両開発部へのインタビューです)

すべての人の移動を楽しくスマートにする

WHILLはパーソナルモビリティを生産・販売している会社です。デザインとテクノロジーの力を生かし、誰もが乗りたいと思える車椅子を開発しています。ある車椅子ユーザーから「車椅子に乗っていると、100m先のコンビニに行くのさえあきらめてしまう」と言われたことをきっかけに、車椅子の可能性を追求しようと考えました。「すべての人の移動を楽しくスマートにする」それが私たちのミッションです。

暮らしを楽しくする新しい“クルマ” WHILL Model C

暮らしを楽しくする新しい“クルマ” WHILL Model C

自動運転システムの開発も進むWHILL。羽田空港をはじめ北米や欧州などの国際空港で実証実験が行われています。

車両開発部では外装やフレームなどの設計を行っており、試作品作りにMDX-50を活用しています。世の中にはいろいろな工作機械がありますが、検討した結果、MDX-50に決めました。お付き合いのある会社でローランド ディー.ジー.の製品が使われていて使いやすそうだったのが主な理由ですが、テーブルに置けるほどの本体サイズだったことも決め手になりました。

WHILLの車両開発部では試作品作りにMDX-50を活用

開発期間を短縮したかった

開発部には日々、お客様から要望がフィードバックされてきます。また、製品本体だけでなく新たなオプションやアクセサリーの開発も進めなければいけません。短期間で開発するために、試作品作りをさらにスピードアップしたいと考えていました。外注業者に依頼するとどうしても数日かかってしまいます。もちろん今でも高い精度が必要な場合は外注業者にお願いしますが、自分たちで作ってすぐにチェックできるようにしたいと思っていました。

MDX-50でリム(車輪の縁の部分)を試作

MDX-50でリム(車輪の縁の部分)を試作

導入したところ、期待通りに開発期間が短縮できました。会社で設計し、帰宅前に出力をかけておく。次の日の朝には試作品ができているので、すぐにチェックして次のステップに進むことができます。

導入したことで開発メンバーの意識も変わりました。設計を進めている段階で「このタイミングで一度、MDX-50で削ってみようかな」と思うようになったのです。コンピュータ上の3DCADで形状を確認するのと、実際に作って触ってみるのとはまったく違います。実際にカタチにしたり、形状違いで何個か作ってみたりして確認できるのでとても効率的です。
その試作品で確認できたら、次に外注業者により高い精度の試作をお願いする。そのような新しいマインドセットになったのは大きな変化です。試作の手段が増えたことで、より良い製品づくりができるようになりました。

試作品作りをMDX-50で内製化。開発をスピードアップ

試作品作りをMDX-50で内製化。開発をスピードアップ

製品と同じ材料で作って確認できる

切削加工は量産と同じ材料が使えるので重宝しています。強度の高い樹脂から一般的な樹脂まで、いろいろな種類を使っています。ABSもあれば、ポリカーボネート(PC)やナイロン系の材料、場合によってはガラスファイバー入りのナイロンなども使います。今のところ材料の対応力に不都合は感じていません。樹脂全般に対応しているのが良いですね。3Dプリンターも便利なので使っていますが、材料が限定されるため強度の評価試験ができません。強度を確認したいときは量産と同じ材料を入手し、削って作っています。安全性能が重要な製品ですので、強度確認試験もできるのはとても助かります。

ラクに作れて、スピード感のある試作が可能に

MDX-50には自動で刃物を交換するオートツールチェンジャー(ATC)が最初から装備されていて、作業の手間が省けます。オプションの回転軸ユニットを装着すれば、両面の加工も簡単にできます。開発は日々時間に追われ、すぐに結論を出さなければいけない場面も多々あります。緊急で確認しなければならない時にとても助かります。小さいものなら1時間で削れてしまうスピード感はすばらしいです。

回転軸ユニットで両面加工を自動化

回転軸ユニットで両面加工を自動化

日本でものづくりに挑戦する使命感

残念ながら、今の日本ではものづくりに挑戦するベンチャーが少なくなってしまいました。IT・ソフトウェア関係は多いのですが、ハードウェアベンチャーは廃れている傾向にあります。シリコンバレーなどには革新的な製品作りにチャレンジしている企業がありますが、日本では数少ない存在になっています。そういった状況だからこそ、日本でものづくりに挑戦する使命感を覚えています。「私たちが新たなものづくりに成功しないと後が続かないのではないか」それくらいの覚悟を持って取り組んでいます。後に続く企業やライバルになるような企業がもっと出てくることを期待しています。

ありがとうございました。

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この記事は3次元切削加工機などの当社3D製品を導入し、ものづくりの課題を解決したお客様の事例集「Customer Success Stories Vol.3」に収録されたコンテンツを加筆・修正したものです。
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