事業を通じた社会課題の解決

手術器具の保全作業支援ソリューション

当社グループでは、手術で使用するメスや鉗子等の鋼製小物や内視鏡等の器具の洗浄・滅菌等を担当する病院の中央材料室に対し、デジタル技術を活用した作業支援ソリューションを提供しています。
中央材料室の保全作業は一般に、使用済み器具の受入、分解、洗浄、乾燥、点検、組立、包装、滅菌、保管、払出から構成されます。診療科ごと、部位ごとにさまざまな手術が行われるため、使用される器具の種類は多岐にわたり、円滑に作業を進めるためには、各器具の名称や用途、分解・洗浄・組立の方法、手術ごとの適切な器具のセット等を記憶する必要があります。また、それぞれの工程で適切な処置を行うために、専門的な知識に加え、長年の経験に基づく一定のノウハウが求められます。さらに、器具の洗浄・滅菌作業の不備による感染等のリスクを回避し、患者の安全を確保するためには、衛生管理を徹底し、細部にまで注意を怠らない慎重な作業姿勢と健康や生命に対する高い倫理性が要求されます。
当社はこれら作業に伴う作業者の肉体的、精神的負担を軽減し、作業品質のバラつきを抑制すべく、長年にわたって積み上げられてきた当社の生産に関わる人的・知的資本と、生産工程で使用しているデジタル屋台*の指示機能「D-PICS」(Digital Production Indicate & Control System)を応用した保全支援システム「Eirthemis」(エルテミス)を開発・提供しています。現場の作業者の動作を観察し、勘・コツをヒアリングすることで暗黙知を形式知化する一方、紙ベースの作業指示書を紐解き、各工程をできる限り細分化し、画像を多用することで、誰もが分かりやすいデジタルマニュアルを整備します。属人化しがちな熟練作業者の作業を標準化するとともに、高品質な作業水準を担保しています。
国内の病院の中央材料室では、熟練作業者の高齢化や退職が進み、負担が大きく、危険を伴う場合も多いため、次代の担い手不足も顕在化しています。経験値や熟練性を取り込み、視認性や識別性に優れ、記憶力や注意力をサポートするD-PICSの仕組みは、次代を担う持続可能なソリューションとして中央材料室の現場で高い有用性を持つものと確信しています。当社は今後も、強みであるデジタル技術にさらに磨きをかけるとともに、各病院との連携・協働を進めながら、世界中の中央材料室の現場を視野に入れ、高い作業品質と生産性を両立するシステムの汎用性を高めてまいります。

※デジタル屋台について
当社が独自に開発したデジタル方式のセル(一人一台)生産システムで、当社タイ工場での生産に採用されています。作業者は、パソコンのディスプレイに表示されたデジタルマニュアルを確認しながら、工程ごとに必要な部品を供給するラックから部品を取り出し、指示された電気ドライバーを選択して製品を組み立てていきます。間違った部品やドライバーを使用することがないよう工夫されているだけでなく、各工程で品質検査を実施することで、工程内で品質を作り込んでいます。デジタル技術を活用することで人間の記憶力や注意力をサポートし、高品質と高生産性を同時に達成していることが特長です。各屋台での作業ログデータはサーバ上に保存され、現場管理者が作業進捗を把握したり、データ解析を通じて改善活動につなげたりすることができるようになっており、個別の屋台の管理だけでなく、工場全体の生産を最適にコントロールできる点も大きな特長です。

社会(S)のインデックス

サステナビリティのインデックス

おすすめコンテンツ