気候変動問題に関する考え方および取組み
気候変動問題は、当社においても、リスク・機会の両面で企業価値に影響を与える蓋然性が高いと考えており、マテリアリティの一つとして「環境負荷を抑制し、循環型経済に対応する環境経営基盤の整備」を特定しております。気候変動に関する取組として、シナリオ分析に基づくリスクの洗い出しを行い、財務影響額を評価しております。また、移行リスクの低減に向け、中長期的な取組テーマと具体的な取組内容を設定しております。
ガバナンス
気候変動に関する課題については、サステナビリティ委員会で検討・審議するとともに、同委員会傘下の気候変動ワーキンググループで部門横断的な活動や取組を推進しております。
戦略
気候変動に関する課題が事業に与える影響を考慮するために、移行リスクと物理リスクの観点で、1.5℃シナリオおよび4℃シナリオを用いて、財務影響額を評価しております。1.5℃シナリオでは、カーボンプライシング政策が強化されることによる事業運営上のコストの増加や顧客の嗜好・価値観・行動の変化に伴う当社製品・サービスに対する選好度の低下リスクが、また、4℃シナリオでは、風水害等による製造拠点等への物理的リスクの影響が大きくなると分析しております。シナリオ分析に基づいた主な気候関連リスクの評価結果は以下のとおりです。
大分類 | 中分類 | 小分類 | 特定された気候変動のリスク | 時間軸 | 影響度 | |
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1.5℃ | 4℃ | |||||
移行 リスク |
政策と法 | 炭素税の導入 | 事業活動に伴う排出量に応じた炭素税支払いコストの増加 | 中 | 小 | 小 |
炭素集約度の高い部品等の値上げによる調達コストの増加 | 中 | 大 | 大 | |||
技術 | 低炭素技術への移行コスト | バイオプラスチックへの移行に伴う部品等の値上げによる調達コストの増加 | 長 | 小 | 小 | |
市場 | 顧客行動の変化 | 顧客の嗜好変化による製品需要の減少 | 中 | 大 | 小 | |
エネルギー市場の変化 | 電力価格高騰による調達コストの増加 | 短 | 小 | 小 | ||
物理的 リスク |
急性 | 災害による操業の停止の増加 | 風水害による工場等の操業停止に伴う売上の減少 | 短 | 小 | 中 |
慢性 | 降水パターンの変化 | 風水害や洪水による工場等の損壊に伴う修復(または移転)コスト | 中 | 小 | 中 |
影響度:「小」を1億円未満、「中」を1億円~5億円、「大」を5億円以上と想定(営業利益ベース)
時間軸:「短期」を3年以内、「中期」を10年以内、「長期」を10年以上と想定
当社は、気候変動緩和に対するレジリエンスを強化するため、環境面での中長期的取組テーマを「バリューチェーン全体を通じてGHG排出量の削減を推進するとともに循環型経済への対応を視野に入れた環境経営の基盤を整備する」とし、具体的取組内容を「Scope1、2のGHG排出量の削減」「サプライヤーエンゲージメントの推進」「製品の付加価値(生産性)向上による実質的消費電力の低減」と設定しております。なお、風水害等によるタイ工場等への物理的リスクについては、日本で必要最小限の生産を継続できる体制を保持することで、概ね受容できるものと考えております。
リスク管理
気候変動に関する課題については、サステナビリティ委員会事務局で経営・事業に与えるインパクトを分析・検討したうえで、サステナビリティ委員会で議論し、対応方針を決定しております。決定事項については、関連する各部門・関係会社に展開し、それぞれのリスクマネジメント活動の下で管理するとともに、リスクマネジメント事務局が部門横断で包括的に管理、モニタリングする体制を構築しております。
指標と目標
気候変動が事業に与える影響を評価・管理するとともに、気候変動緩和に対するレジリエンスを強化するため、Scope 1、2のGHGガス排出量について、1.5℃目標と整合的な「2030年度に2021年度比38%削減(年率4.2%削減)」とする目標を設定しております。
Scope 1、2の削減については、当社グループにおける再生可能エネルギー電力の比率を指標に設定し、活動を推進しております。本社のある浜松地区ではCO2フリー電気を導入しております。また、2023年に竣工した本社新社屋は、建築物省エネ法による基準一次エネルギー消費量に対して、省エネと創エネで75%以上のエネルギー消費量の削減を実現したNearly ZEB認証を取得しております。
Scope 3については、従来のプラスチックに代わる紙ベースのインクカートリッジを採用するなどの活動を推進しておりますが、今後の削減に向けた指標・目標設定および移行計画については、具体的取組内容である「サプライヤーエンゲージメントの推進」「製品の付加価値(生産性)向上による実質的消費電力の低減」に基づき、検討を進めてまいります。